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大阪高等裁判所 昭和31年(う)705号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

理由

被告人久我サワ子の控訴趣意及び各被告人の弁護人能勢克男、坪野米男連名の控訴趣意第一、二点について。

被告人等三名がほか数十名と共にスクラムを組んで大島とし外四名をとりかこみ、労働歌を高唱し、ワツシヨワツシヨと掛声をかけて気勢をあげながら、押す、体当りするなどの行動をしたことは原判決挙示の証拠によつて優にこれを認定するに足り、所論に鑑み記録を精査してもこの点に関する原審の認定に認があるとは誤められず、もとより被告人等において右暴行の認識がなかつたものとみることができない。

しかして、刑法第二〇八条第一項にいわゆる暴行とは、人の身体に対する不法な一切の攻撃方法を包含し、その暴行が性質上傷害の結果を来すべきものであることを必要としないことは論旨引用の昭和八年四月一八日言渡大審院判例によつても明かであり、原審が被告人等の前示行為を以て右法条に該当するものとし暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項を適用した点に所論のような違法があるということはできない。また、被告人等の前示所為が、かりに労働組合法第一条第二項本文所定の目的を達成するに出たものであるとしても、その行為自体暴力の行使に該当する以上これを以て同項にいわゆる正当な行為であるとすることのできないことは同項但書によつて明かであつて、憲法第二八条は右のような行為までをも正当化する趣旨ではない。論旨は理由がない。

右弁護人両名の控訴趣意第三点について。

量刑に関する所論に鑑み記録を検討しても被告人等に対する原審の科刑が重すぎるとは考えられない。

よつて、刑事訴訟法第三九六条に則り主文のように判決をする。(昭和三一年七月一二日大阪高等裁判所第一刑事部)

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